巷ではCW試験存続/廃止に関するさまざまな論議が続いていますが、少なくとも商業的視点を離れてアマチュア無線の『原点』に焦点を合わせる限り、論議など必要がない位、ビジネス・高効率通信手段としてではなく趣味として無線通信と関わる全アマチュア無線家にとって無線局設置環境/経済力/無線工学系技術力/視聴覚能力/語学力などの格差を埋める意味あいでもCWモードは興味深く価値ある存在であるとの私個人の考えは変わりません。
 
言葉を変えれば『これから先の時代は、モールス符号の価値(=いわゆる基本的アマチュア業務遂行に関わるコストパフォーマンス、文字に表したり可聴音だけでなく可視光線や体感振動などを媒体にしてすらも「通信」できる、グローバル的な視点からは様々な判りにくい外国語の壁すらもなんとか超えられるかのような、より優れた人間ワザ追求)に気がついたアマチュア無線家達だけに遺された先祖伝来のお宝モードとでも言い表して過言ではないと決めつけてしまったら大袈裟でしょうか?

決してCW上手とは言えないARA個人としても・・・世界中からの電波が入り乱れ、あのパチンコ屋さんの軍艦マーチBGMに彩られた喧騒にも似た夜間の40m/CWが大好きです。混信があったり、弱くてよく聞こえないとイライラがつのるSSB信号と違って、パイルアップに参加したり、全神経を集中して混信やノイズに浮き沈みしつつDXから届くか弱いCW信号に耳を傾けていると、いつのまにか仕事で疲れた脳味噌がリフレッシュされてしまうのですから不思議です。

21世紀になっても、CONDXによってエコーをひいた遠距離局からのCW信号は、同じ状況下のSSB信号やPSK31信号よりも、QSBやねじれ込むような位相歪みを伴って地球の裏側に住む同好ハム仲間達から届いていたあの懐かしいHF帯・フルキャリアAM音声信号と似通った大自然と電離層のロマンを感じます。
 
これって、決して『懐古(回顧)趣味』じゃないと思います。
「この小さなグライダーじゃ外国へも飛んでいけないし、モノやヒトの確実な移動手段としての実用性にも乏しい。でもね・・・自分の僅かな余暇の楽しみ位は、日常どっぷり浸かっているハイテクコマーシャリズムに流されることなく、空を飛ぶ職業に憧れていたあの頃の初心に戻って、現在の裸の自分が大自然の中で目には見えない上昇気流を見つけながら何をできるかチャレンジしてみたいんですよ・・・」
永い同年代友人の一人でもあるカンタス航空・ベテラン747機長が趣味で操縦する自作のグライダーに怖々同乗させてもらった時に、彼は彼なりの大空への想いを真顔で語ってくれました。
 
リアルタイムDX情報と首っ引きでそのものズバリのスポット周波数へと駆けつけ、到底自分自身の手には負えないようなメーカー製・250HzのCWフィルターやDSPの性能云々をユーザー評価するのが当り前になった現在、、、そして、すべてを知り尽くした自作受信機のスプレッド用バーニアダイアル(ファインチューニング)では足りずに、アルミ板のフロントパネル面を指で押しながらドリフトとマグネチックヘッドフォンのピーキーな周波数特性を利用して、いつどこに出現するやも知れぬQRMに埋もれたお目当てDX局の微弱電波を何とか一番乗りでキャッチしようと鼓膜フィルターで聞き分けていたあの頃・・・。
 
お手軽メーカー製リニアアンプによるオーバーパワー送信が云々されている現在、、、そして、どうにも太刀打ちできない珍局へのパイルアップにイライラ参加しながらハンダゴテを暖めて終段管プレート用電源トランスのセンタータップを宙に浮かせた邪道単波倍電圧に配線し直し、CWのリズムにシンクロしてオーバーロードの苦しさにブンブンうなりを上げる電源トランス+プレートが真っ赤になって『頼むから止めてくれぇ!』と叫んでいるかのような米軍ジャンクで手に入れた終段管達にムチ打ってドキドキ・ハラハラ・・・バグキーで機関銃CW送信しながら、受験勉強そっちのけのDXハンティングに青春を賭ける貧乏高校生の執念を込めたささやかな『オーバーパワー』をしていたあの頃・・・。
 

※ほろ苦い想い出:

センタータップを浮かせた邪道倍圧の結果、現在では消滅カントリー(当時の表現)となっているKS4=Swan Is から、やっとこさコールバックがあった途端に、耐圧に余裕があった米軍ジャンク整流管や平滑コンデンサーよりも先に一番高価な国産電源トランスがぶっ飛びました!
(ささやかオーバーパワーの代償は高かった=笑)

 
出来合いの最新技術と財力に大部分を頼る『カウチアマチュア無線』も、普段はストレスまみれの一般社会人達が僅かな余暇をエンジョイしたり、若い頃にはなかなか叶えられなかった夢を実現して定年後のバラ色ライフを演出する趣味としてはなかなかのお楽しみ路線。宇宙や地球以外の天体、地球を取り巻く大自然の偉大な恵みを借り、人間本来の五感(時には第六感も・・・)や自分なりの知識やワザをフルに活かしてさまざまなチャレンジを試みるのも同じアマチュア無線の別な楽しみ方。

自作はもちろんのこと、AWARDハンティングだってQSLカードコレクションだってコンテスト参加だって大自然を満喫しながらの移動運用だって・・・やりだしたらなかなか止められない。所持資格や年齢・性別・職業的専門分野に関わらず、気のあった仲間達と共通の趣味を通じた異業種・異世代交流的な『電話ごっこ』でさえアマチュア無線のソフト面として考えれば便利で楽しい。全部まとめてできる恵まれた状況ならば鬼に金棒・ネコに小判(ちょっと違ったか?!=笑)で言うことナシ・・・。
 
お手軽通信だけが主目的の『バブルハムブラザーズ』の皆さん方が他のもっとお手軽な個人通信界に流出、ハイテク&インターネット融合時代の到来で様々な選択肢と、その気になりさえすればアマチュア無線にも利用可能な新旧通信技術分野が広がった分だけ、やり方によっては巷でささやかれている『衰退』どころかますます幅広く面白くなりそうなこれからのアマチュア無線ではないでしょうか?

商業的ムードに押し流されてハムの歴史を支えるアナログ技術やCWモードを(食わず嫌い的に)馬鹿にすることなく、かと言ってすべての21世紀ハム達に強制的に押し付けることなく、、、 より幅広く・奥行きの深い21世紀多目的アマチュア無線を、個人レベルでも存分にクリエートできるような新制度への変革を願ってやみません。
 

※フルキャリアAMモードについて:

このページの主旨からいささか外れてしまいますが、アマチュア業務に限ったフルキャリアAMモードも『捨てたものではない 』という認識を持つARA です。商業通信界の動向を唯一のお手本にしたり、電波資源の有効活用、省電力高効率通信などを焦点にして議論した場合は、確かに多くの皆さんの評価通りの『化石モード』かもしれません。

しかし・・・『 一対の送受信機+空中線』をアマチュア局の基本形として考えた場合、理解しやすくて構成もシンプルなAM送受信機の仕様を考えただけでも電磁波を媒体とした通信に興味を持つ子供達がお小遣いで楽しく実験したり、最近の巷でトレンドの手作りブームではありませんが、素人同然の初心者がありあわせのパーツをリサイクル活用して自作機による無線通信への第一歩を手軽に踏み出してみるのに最適のAMモードであることに変りはないのではないかと考えます。

バイオリンとペルシャ語に夢中だった文科系小学生のARA が無線通信に興味を持つようになったのは、偶然手に入れた5球スーパーのジャンクをバラしたST管・6WC5他のパーツを再活用した見ようみまねのAMワイヤレスマイクを作ってみたことが大きなキッカケでした。スピーカーやクリスタルイヤフォンがマイクロフォンの代用として使えることを発見したり、『自分が作った電波』に大感動して、ゲルマニウムラジオ片手に家中を歩き回った興奮ぶりを昨日のことのように想い出します。

その延長線上で、MT管5球スーパーへの乗り換えでふんだんにジャンク出物を頂戴することができた並四ラジオやST管式5球スーパーと同じケースに組み込んで送受切り替えスイッチを追加して『トランシーバ』化してみたり、少しでも強力な電波を発射したいと、子供心ながら低周波増幅用の42や6ZP1を使ったリニアアンプをそれが『違法』とも知らずに開拓、庭先の樹木によじ登って逆L型やロングワイヤーアンテナ工事など、、、見えない電波をいじる面白さにすっかりハマってしまった・・・という訳なのです。

黎明期を終えた戦後のアマチュア無線の大きなポーションが、『青少年が科学する趣味』から『買った電波で大人たちが通信する趣味』への変遷を遂げて久しい雰囲気ですが、子供たちを含めた老若男女個人それぞれの技術・知識レベルと予算枠内で『自分で作った電波』による通信実験を楽しむことも『現代に通用する立派なアマチュア業務の一部分』だと考えた場合、入門にふさわしいAMモードをはっぱひとからげでないがしろにしてしまうのは『真のアマチュア無線家らしくない』、、、ような気がしてなりません。

CW モードとともに無線通信(放送)のルーツとも例えられるフルキャリアAMモードも、商業的ムードに誘導されることなくアマチュア的存在価値を認められ、他モードでの通信に迷惑を及ぼさないカタチで命を永らえることができるような21世紀アマチュア無線を望みます。

 
de VK1ARA
 
Updated:April/2000